SSブログ

低レーテンシー・モニタリング・モードでギター・ソロ・パート録音! [Pro Tools]

今回は、新しいインターフェイス「Pro Tools Mbox」で利用できるPro Tools 9での低レーテンシー・モニタリング・モードというのを紹介してみましょう。

これはPro Tools 9の新機能というわけではないですが、CPUベースのシステムで作業する時に気になるモニタリング・レーテンシーの回避策のひとつとして有効な方法です。

低レーテンシーモニタリング・モードとは?

CPUパワーで動作するPro Tools 9の場合、レコーディング時に「プレイバック・エンジン」で設定するH/Wバッファー・サイズ値だけ自分の演奏が遅れてモニターされます。

正確に言うと、このレーテンシー値は「ADコンバータ+ バッファーサイズ +ソフトウエアミキサー+バッファーサイズ+ DAコンバータ」の処理時間の総計が理論値ですが、そこにUSBやFirewireのバッファーをどうハンドリングするかで、ソフトやオーディオドライバーによって特徴が出るようです。 いずれにしろバッファー値は、録音モニター時の遅延の時は2倍にして計算しとく必要があるわけですね(出入りで各1回通る)。

LM10-LLM on Rec128 Sample.jpg

なんでそういった遅延が派生するかという、その理由を書いてると超絶に長くなってしまうので、今回はパスしますが、これはもう避けられるものではないので、CPUベースとはそういうものだと、ここは割り切って作業するしかないわけです(それを補って余りあるメリットもあるわけですし)。

 

但し、Mbox等の幾つかのインターフェイスと組み合わせると、ソフトウエア・ミキサーでのDSP処理を介さず直接、演奏している音をモニターすることのできる「低レーテンシー・モニタリング・モード」というのが利用できて、モニター遅延をほぼAD/DAコンバーターの遅れのみ(大体2ms前後)に抑える事ができるようになります。

この「低レーテンシーモニタリング」モードは、「オプション」メニューから選択します。

LM10-LLM on Option Menu.jpg

 ちなみに同じ「遅延(=レーテンシー)」でも、上にある「遅延補正」はミックス時に、一番遅れているトラックにタイミングを合わせる事で「補正」するモードのことでモニター時の遅れを補正するわけではないのでご注意を(詳しくはこちら)。

時と場合によっては「なーんだ、それで録音すりゃいいんだー」って話ではあるのですが、そうでないケースも多々あるのがちょっとややっこしいんですね。

というのは、このモードにすると録音するトラックで実行していたRTASプラグインやセンドが、下記のように全てバイパス設定となり、例えば今回の曲の場合、ギター・トラックに実行していたコンプやディレイは無視されて「素」の音でモニターしながら録音することになるわけです。

LM10-LLM on RecEnable.jpg

つまり低レーテンシー・モニター・モードを利用する場合は、気分よく演奏する為、その前段階である程度きっちり音を作っておく事が大事になるかもしれません。ここ数年、個人向けの良いハードウエア・コンプやEQが人気なのはその辺もあるんでしょうかね?

アコギやボーカルのような素材だったら「素のまま」でも問題ないケースが多いと思いますが、自分のように、エレキ,特にロック系の曲だとディストーションとかもかけたい、でも後から音色変更したいから「リアンプ」する為、モニターだけに、そのプラグインを実行したい.......という場合、この設定だと、それこそそれ用に特化されたDSPをインターフェイス内に搭載している「Eleven Rack」とかを使わない限り、通常CPUベースのシステムではそれを実現するのは不可能です。

それか、まあ、自分だけが我慢すれば良いような状況(=自宅録音&一人作業)であれば、脳内ディストーションかけながら素のまま弾ききってしまって、後からプラグインかけて音作りするとか.......でしょうか.......相当,想像力たくましくないと、ちょっとキツいですね?

自分の場合は、全てPro Toolsに頼りっきり(机スッキリ!)なので、外にアンプもエフェクターももっていないし、脳内ディストーションもあんまり機能しないので、そういった曲の時は「低レーテンシー・モニタリング・モード」は諦めて、GTRやElevenといったプラグインを実行して歪ませながら、H/Wバッファー値のレーテンシーのまま根性で弾いてます[パンチ]

その状態で、どうしても許容範囲内のバッファー値だとCPUパワーが足りなくなってエラーがでる場合は、バックを2トラックにバウンスしてCPU負荷を減らし、バッファー値を減らしてオーバーダブする形ですね。自分でやってる分には「何待ち?」みたいな質問も来ないので安心です......ってそういう問題じゃないですよね[あせあせ(飛び散る汗)]

Pro Tools MboxのDSP機能

この低レーテンシー・モニタリング・モード時には、CPUは(ほぼ)何の処理もしてくれないわけですが、Mboxのように使用するインターフェイスにDSPチップが搭載されている場合は、簡単なエフェクターを実行し、それをモニターに反映させて演奏することができるようになります。

例えば、Mboxだと、DelayやReverbといった空間系が装備されています。下記がその画面です。
確かに素の音だけをモニターして演奏するよりは相当気分でます。

LM10-LLM on Mbox3 HW Set6 DlyOn.jpg

これは正確に言うとPro Toolsソフトウエア自体の機能ではありませんが、Mbox接続時にPro Tools内のハードウエア設定ウインドウ内の「コントロールパネル起動」というボタンを押すと呼び出せます。2つ並べるとこんな感じです。

LM10-LLM on Mbox3 HW Set2.jpg

Pro Toolsミキサーとは別にもう一個別のミキサー画面が現れる事になるので、最初、一瞬戸惑いますが、Pro Toolsと同時に起動したときには、レベルの部分はPro Toolsミキサーに任せてここでは操作できない(上記の画面でもフェーダーがグレイアウトしてるのがわかると思います)ような設定になっているので、エフェクターを実行するところ以外は、ほとんど存在を気にせず作業していくことができます。

それがこのコントロールパネル内の「Set UP」で設定できる「Disable Host Control(ホストからのコントロールを無効にする)」という項目で、初期設定ではここがオフの状態(=Pro Toolsが起動すると、そこに操作を委ねる)です。その場合、ここでは何をするかというと上記で説明したように、搭載されているDSPチップを使ってモニター音のみにリバーブやディレイを実行する(これらは録音したデータには反映されません)役割(とチューナーがついてます)に特化されるわけですね。

エフェクトのパラメーターや操作は非常にシンプルなので、そんなに迷う事はないと思いますが、あくまでもこの状態だと録音する演奏のモニター音に実行する為のもので、Pro Tools上のRTASプラグインのように他のトラック用のエフェクト・プラグインとして使えるわけではないことにご注意ください。

LM10-LLM on Mbox3 HW Set3.jpg

逆に、ここにチェックを入れると、Pro Toolsと同時起動していても、このコントロールパネル上からレベルやパンをいじれるようになります。

試しにやってみましたが、こうするとソフトウエアからリターンされたサウンド(Pro Toolsの2ミックス等)にエフェクト実行したりもできるようになりますが、これは正直、逆に危ないです(知らぬ間にマスターにリバーブかかったまま聴いてたりとか....)。

ということで、Pro Tools同時起動状態で、こうすることで便利になるケースが余り想定できないというか、両方でモニター・レベルが操作てきるようになってしまい、かえって混乱の元にも成りかねないので、ここは初期設定のままチェックを外しておく方が無難だと思います。

勿論、この場合でもPro Toolsが起動していなければ、コントロールパネル上でレベル/パン/エフェクト等が、入力素材に対して独自設定可能となります。

低レーテンシーモニタリング・モードでギター・ソロ録音

自分の場合で、このモードのメリットを最大限に生かせるケースは、やはり普段だとレーテンシーが気になるテンポの速い曲で、かつギターにあまりエフェクトを実行しなくてもすむものってことになると思います。

ということで早速そんな感じの曲をやってみました。 Inspiration by makasaka

おお、確かに快適に弾けますね![決定]
下記がその時のミキサーウインドウです。

 

LM10-LLM on Mixer LLM.jpg

 

フェーダーが赤くなってるところが録音トラックですが、低レーテンシーモニタリングモードがオン(プラグイン/センドがバイパスされてます)、自動遅延補正もオン(しかし、録音トラックは補正がかからず、録音後、補正された場所に位置するようになってます)です。

ここでの注意は、録音トラック用にキューアウトを設定せずに、2ミックスを聴きながら録音するような場合は、「Master Track」で実行しているプラグインを必ず無効にしておくことです(画面上だと右端のトラック)。

ここにプラグインが実行されていてモニターに使うステレオアウト自体が遅れる設定になっていると、自動遅延補正機能も低レーテンシーモードも関係なく、問答無用で全てが遅れて聴こえてしまいます。

特にMaximとかL3-16のようなルック・アヘッドするレベルマキシマイザー系は遅延が大きく、明らかに演奏に影響が出ます。これって「当たり前やん!」って思うんですが、作業の後半である程度ミックスしてから、ちょっと最後にオーバーダブみたいなときに、マスターフェーダーのプラグンをオフにするのを忘れちゃって、「あれー、なんでこんな遅れるんだろう?」なんてことが結構あるんですよね(自分だけですかね?)。これはオーディオだけでなくMIDIでも同じ状態になりますので、くれぐれもご注意を。

ということで、今回はその辺も注意深く設定して、ディレイを薄くかけてモニターしながら弾いてみましたが、「これが遅延のない世界かー」とある意味感動です。

でも、だからといって普段よりうまく弾けてるかというと、それは全然別問題みたいで、最終的には何テイクか録って、うまく行ったところを「切り貼り」するという行程は同じだったです[ふらふら]

 録音後は、REC待機ボタンを外すと、自動的に低レーテンシーモードから抜けてプラグインのバイパスが外れます。今回ギターに実行しているのはWaves GTRです。

LM10-LLM on GTR.jpg

プリセットは「Natural Beauty」っていうやつで,本当にそのまんまで十分美しいサウンドなのでパラメーターは全くいじってないはず(ディレイだけテンポにシンクロしてます)。コンプ等が実行され、アンプ・シミュレーションも通る、所謂、リアンプ作業ですが、「素」のままで弾いたイメージからは、そんなに逸脱したものにはなっていません。自分の場合は、これくらいの変化までが限界ですが、脳内ディストーションでのモニターしながら弾ける人の場合は、ここをディストーションのプリセットにしてもOKかも......

 

ということで、Mboxでの低レーテンシー・モニタリング・モードについてでした!

では、また!!


トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

トラックバック 0

http://soundcloud.commakasaka

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。